気候サミットとSDGs

国連の気候行動サミットが9月23日、ニューヨークで開かれ、77カ国が2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロとする目標が公表された。しかし、日本は表明していない。国際会議において発言の機会もなく、世界から厳しい目線を向けられているのである。

新環境大臣の発言が注目されること自体は、私は、悪いことではないと思う。問題は、その先で、大臣だけでなくメディアも国民も、本質的に、日本が石炭廃止に向かう先進国の流れと真逆に動いている現状をしっかり認識し、環境をまもり経済(生活)をより豊かにしていくまともな議論と行動を始められるかどうか、にあると考える。

スウェーデンの16歳の少女グレタ・トゥンベリさんが指摘しているのは、そのことだと思う。つまり、先送りするな、と。気候危機を「自分ゴト」に感じない大人たちに怒っているのである。日本では、「行動」する子どもに対して、いい大人が「評論」に終始している姿は、あまりに恥ずかしい。

日本は気候危機にある

日本は、先進国が石炭廃止に向かう流れと真逆に動いている。現在も石炭火力をベースロード電源として40基近い石炭火力発電所の新増設の計画を持つ。これが予定どおり進めば、2028年に石炭火力の比率は37%。一方、イギリスやカナダ、フランスやイタリアも、2030年までに石炭火力を全廃する方針を決めている。ドイツも2038年に廃止を発表。「プラごみ」を禁止する動きもここから出てきている。

私が強調したいのは、世界とのギャップだけではない。

何よりも、足元で、直近でも大型台風による千葉の甚大な被害や宮崎の竜巻、佐賀の豪雨災害、昨年も広島や岡山など西日本豪雨による土砂災害など、これだけ頻繁に気候危機が発生している。今回の千葉の農業被害は367億円にのぼり、3.11の346億円を超えたという。

にもかかわらず、こうした気候危機と減災策をセットにした政策論議が国会で皆無に近いことは最も深刻な状況だと思う。「いのち」と国民生活をまもることが政治の使命のはずである。

もう一度、振り返っておきたい。地球温暖化対策には2つある。
①いかにCO2の排出量を減らすのか。これを「緩和」と呼ぶ。
いわゆる省エネや、再エネを普及拡大するなど。

②どれだけ影響を最小化するのか。こちらは「適応」と呼ばれる。
豪雨や洪水の危機管理、渇水や治水の対策、熱中症や感染症の予防、
農作物や生態系の保全など。

日本では、一般的に、①ばかりが温暖化対策(それも努力目標でルール化されていない)として強調され、実際に②の災害からの危機管理や農業保全について十分な予算も対策もなく、自然災害だから仕方ないみたいな風潮さえある。これだけ衛星打ち上げやIoT技術も発達し、事前に気候予測しどう危機管理するかや都市化による脆弱性にどう対処するかという議論をもっと活発化させる必要があると思う。

日本の温暖化対策のこれまでと今

私が、2010年に「地球温暖化対策基本法案」を衆議院本会議で担当し、それが衆議院は通過したものの参議院で時間切れで廃案になった痛手は大きいと、その後10年が経とうとしているなか、改めて、思う。

そのとき、画期的だったのは、まず法案で中長期目標を立てたこと。
2020年までに1990年比で25%CO2削減する中期目標と、
2050年までに1990年比で80%削減する長期目標を立て、
国連演説でも発表し、世界から大きな注目を得た。

具体策は3つ。
a 再生可能エネルギーを普及させるための固定価格買取制度(FIT)とつくる。
b 環境税を入れる。
c 排出権取引の制度を導入する。
→aだけ実現して、再生エネルギーは増え、現在の比率は17%となる。

しかし、自民党政権に戻ってから、現在は、
2014年に改正された「地球温暖化対策推進法」が継続し、そこには、中長期的目標はなく、国の責務は地方自治体や国民への啓発に留まる。法律上、ルール化された具体策はない。

「パリ協定」で日本が約束しているのは、
2030年までに2013年比で26%のCO2削減の中期目標であり、
2050年までの長期目標は、先の6月に80%削減を閣議決定したばかりだ。
(中期目標について、これは、1990年比でみると13%削減にしかならない。EUの2030年削減目標を1990年比にすると40%削減となるので、かなりの差となる)

日本では原発事故が起こり、再エネのさらなる普及まで時間がかかるといえど、それが、石炭火力を20年後に全体の37%にまで増やす理由にはならないのではないか。火力でも、LNGシフトをすべきだ。

必要なのは再エネ拡大と「適応」対策

現在私は、再生可能エネルギーの事業化支援に関わる仕事をしているが、全国の地域を回っていると、再エネ拡大と農山漁村の保全や渇水や治水対策という課題は極めて親和性が高いことを、あらためて、実感する。それは、地域再生の道でもある。

また、環境と経済が敵対したのは20世紀の話で、世界でも、再エネの加速度的な普及が経済成長を牽引していて、環境に配慮しない企業には投資しない金融もどんどん生まれている。

今、SDGsのバッジを胸につける人が増えてきた。再エネは、その目標のうち、7つを達成することにつながる。
ゴール 1:貧困をなくす →エネルギーの地産地消、地産都消
ゴール 2:飢餓をゼロに →営農型太陽光で農業の維持と再生
ゴール 7:エネルギーをみんなに、クリーンに →再エネは持続可能で公平
ゴール 8:働きがいと経済成長  →再エネ雇用を増やし環境と経済の好循環
ゴール13:気候変動に具体策を →CO2削減、化石燃料依存からの脱却
ゴール15:陸の豊かさも →土地や水や森を適正活用する再エネは生態系も守る
ゴール16:平和と公正をすべての人に →地域エネでコミュニティの自立へ

再生エネルギーも固定価格買取制度が始まってから丸7年が経ち、コストも下がり、RE100を宣言する企業や自治体が増え確実な変化が起きている。また、再エネを売電するだけでなく、自家消費したり非常用電源モデルを開発したり、さまざまに展開していくだろう。

いずれにしても、気候危機にストップをかけて脱炭素化の道筋は、単なる規制ではなくて、新しい成長と社会をつくる確かなチャンスである。

しかし、もう時間は限られている。

グレタ・トゥンベリさんが1人ではじめた「行動」を、
1人の大人として責任を持って受け止めたい。

 

 

 

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