幼児教育の義務化を

2016.5.18 こども園

「すべての子どもが幼児教育を受けられることを保障すること」。

少子化が我が国の最大の課題となって久しい日本で、我が国の理念としても、政策の優先順位としても、私は、これほど今、将来にむけて必要とされていることはないと考えています。

遅々として進まない待機児童の解消、保育の質の問題、子どもの貧困、児童虐待、育児放棄などの問題が解決に向かうどころか、悪化しているのはなぜでしょうか。

将来を担う子どもを育てることに、そして、とくに母親や保育者に対して、なぜこんなにも冷たい社会なのでしょうか。果たして、それは自己責任なのか、違うと思います。

単に財源がない問題だけではないと思います。むしろ、財源がないという理由で済まされてしまうところに本質的な問題があるのではないでしょうか。つまり、「命」を産み、「命を預かり」、「命を育む」ことの社会の理解と価値がこの国では低すぎる。欧州どころかアジア各国にも劣っているのが現状で、男女とも共働き家庭が根づいている社会はどこも、産む性である母性ケアと子どもの成長が大切にされています。

日本も、すでに2000年頃から、専業主婦家庭よりも共働き家庭がほうが多く、いまや7割近くになっています。

2016.324

待機が多い2歳児未満(とくに1歳児)の「保育」について、まずは受け皿となる環境を100%に整えて質の問題もあわせて全体を底上げすることをめざすべきです。

また例えば、先駆けて、5歳児の幼児教育を義務化して保育士の給与や社会的地位を小学校教諭並みとし、3歳児、4歳児と広げる方向性を示していくことで就学前の子どもの遊びや学びへの関心を社会化していきます(5歳児義務化にかかる財源は約2500億円)。

人づくりこそ、国づくり。
子どもの人格を決める幼児期の教育に対する国の理念や施策が、その時々の財源があるなしで左右されていいはずがありません。

幼児教育の義務化を求めていきたい。義務教育の理念である機会の均等 ▽教育水準の確保 ▽幼児教育の就学率100%(待機児童の解消)▽無償制−−を幼児教育にも導入すべきです。経済格差が学力格差につながる負の連鎖を断ち切って担い手を育てる、子ども関連産業でGDP全体を押し上げる、社会の犯罪率を減らす、年金・介護などの社会保障を支えるために、まずは、幼児教育が重要という社会のコンセンサスを得ていきたいと思います。

なお、就学前の教育へ投資にする効果について、ノーベル経済学賞を受賞した米シカゴ大のジェームズ・ヘックマン教授いわく、金融商品を年率6〜10%で運用するのと同等の「利益」を社会にもたらし、成人への職業訓練や思春期の教育投資よりも効果が大きいという実証結果があります。子どもの成人後の成功は、幼児期に受ける教育の質に大きく影響される。これを背景に、イギリスやフランスは義務教育の開始年齢を引き下げました。

日本も、実行するときではないでしょうか。