明仁天皇と与那国島

3月28日、天皇と皇后両陛下が与那国島を訪問されました。

陛下にとって離島訪問は、皇太子時代を含めて、今回が54島目となられるそうです。
在位中では最後の機会になると見られるなか、日本の最西端の島をお選びになった思いは
どれほど深いものであられたのだろうと想像をめぐらしています。

明仁天皇は退位の意向を示された2016年8月のお言葉でも、
離島への旅を大切な象徴的行為として述べられていました。

沖縄はじめ数々の離島訪問や
幾つもの被災地で国民に寄り添われる御姿から、
多くの国民は自ずと、
象徴天皇というその存在を胸に刻んできていると感じています。

小さな島の匂い、風の音、紺碧の海。
私も、与那国島を訪ねました。

台湾まで、およそ100キロ。晴れた日には向こうの町が見えるほどの近さで、
島と島のあいだには黒潮が勢いよく流れており、独特の歴史と文化をもつ島です。

カジキマグロ漁の盛んな島で、世界中のダイバーの憧れの地。
私もダイバーの端くれとして、西崎(いりざき)岬の先に広がる
真っ青な海に潜り、海流にのり、
地形やハンマーヘッドシャークなどを間近で見た時の感動は忘れられません。

そんな海と生きる島に、新しい変化が。
2016年に自衛隊の与那国駐屯地ができ沿岸監視隊が配備されています。

「小高い丘の上の向こうにある建物がそうだよ」と島人が教えてくれ、
自衛隊とその家族250名が移り住み、人口の15%近くになるその影響は
少なくありません。

国境の島といえば、安全保障上の重要な位置を占める、
いわゆる島嶼防衛です。

天皇、皇后両陛下の、与那国島訪問から、
東アジア情勢でいかなる変化があろうとも、
「武力による解決だけは、絶対にいけない」、
そのような重要なメッセージを、私は受け取りました。

花よおしやげゆん (花を捧げます)
人 知らぬ魂   (人知れず亡くなった多くの人の魂に)
戦 ないらぬ世よ (戦争のない世を)
肝に願て     (心から願って)

陛下が沖縄の戦没者を慰霊された時に詠まれた、「琉歌」です。
ここに、戦後日本のめざす国の姿と、象徴天皇制のあるべき姿が
込められているように思えてなりません。