日本の危機管理は大丈夫か

新型コロナウィルス感染症の拡大が、国内外で止まらない。

中国政府の武漢における初動の遅れや、原因不明の肺炎を警告した医師が処分され、その医師は自ら感染により亡くなられたという悲報は本当に痛たまれない。

一方、日本政府は1月26日の時点でなんの対応方針も出していなかった状況に対して、私はSNSで「遅すぎる」と批判し、封鎖された地域にいる邦人をチャーター機で救出することやWHOによる医療支援を呼びかけた(WHOは非常事態宣言さえも先延ばしにしていた)。

その時点で、既に武漢市内では、ワクチンも防護服もマスクも足りず、病床もなく、診察さえも受けられない人々が急増して健康な人にまで影響が出ているとの情報を聞いたからである。

それから約2週間が立ち、チャーター機での邦人帰国は進み、WHOは専門家派遣を決めたものの、現場で対応にあたられている方々に感謝しつつも、残念ながら、感染拡大は止まる兆しがない。

危機管理は、表に出てこない情報をいかに入手して、分析し早く対処するのかが問われる。

連日、横浜港のクルーズ船から新たな感染者が確認されており乗船者の不安とストレスは想像するに余りある。かつて客船で仕事をしていた私の経験から言えば、クルーズ船というのは特殊な構造空間だ。大洋を航海しても大波や揺れに対して安全なように重い扉で密閉され、空調で空気を循環させ、限られた食料や水をできるだけ共有しながら過ごすようにできている。基本4人部屋2段ベットの乗組員1人につき乗客3-4人の割合で船内生活が運営され、つまり、人から人へを完全に防ぐことは難しい。

集団感染につながりやすい環境下での「隔離」について、政府はどんな指示系統で対処をしているのか。現場は職員と自治体任せになっていないか。一刻も早く、乗客と乗組員の全員検査をやるべきであると、思う。

国内でもヒトヒト感染が確認されている。過剰な心配は不要であるが、だれでも軽い症状を持つ人は検査が受けられるよう、検査基準を広げ、全国の病院でも診てもらえるようにするべきではないか、と思う。

また、WHOは感染症や疫学の専門家チームを中国へ派遣することを決めたが今だ実行されていない。中国政府は人道危機と捉えて一刻も早く受け入れ、国連は総力を挙げて、病原体の原因を究明し対処するとともに適切な医療支援チームを送るべきである。

世界で2番目に感染者が多くなってしまった日本から、政府および与野党あげて、国連と中国政府へ強く要請してほしい。

東京オリンピック・パラリンピックを控えているからといって、よもや、政府は「風評被害」を怖れて国際社会の協力に消極的になったり、感染者の実態把握を怠るようなことがあっては断じてならない。

人の生命がかかっている。
一刻一秒が争われる事態である。