すでに「移民社会」は始まっている

(日本人とフィリピン人の両親を持つ子どもたち。2010年議員会館自室にて。)

外国人労働者の受入れを拡大する入管法改正案が臨時国会に提出されました。

日本はどういう国をめざすのか。
国のかたちを左右する問題であり、
国家百年と計として、真に問われているのは、そこだと思います。

単なる「労働力」ではなく、生身の人間です。

これから入国する外国人に加え、すでに日本で働く外国人、永住・定住して働く外国人。
一部を切り取るのではなく、普段可視化されていない山積みの問題を包括的に議論をし、
すでに外国人なしには産業基盤が成り立たない現実と、
将来的に私たちの社会保障を支える担い手ともなっていくであろう未来を、
見据えたうえでの議論が必要があると感じます。

現在日本には250万人以上の外国籍住民が生活し、うち半分の128万人が外国人労働者です。
外国人が250万を超えるというのは、例えば、名古屋市の人口とほぼ同じ規模。

日本の全人口の1%となる、決して少なくない外国人がすでに日本で働き、
日本の業界を支え、各種の税金や健康保険料を払って生活し、
その子どもたちは日本の子供と一緒にすでに学校で互いに影響しあい学んでいます。

しかも、外国人労働者の人数増加の推移は、ここ2年連続、
一年間に約20万人にも及んでいます。この多さはイギリスやカナダを超える規模。

日本の産業基盤は外国人にどれだけ支えられているかという実態を、まずは直視すべきです。

同時に、やっと国会で技能実習生の生の声が取り上げられていますが、
この悲痛な叫びは、20年も前から「研修生」制度も含め存在してきた日本社会の闇であり、
選挙権のない彼らを無視し、その声に無関心であり続けたことを、
与野党ともに、政治家は、深く反省すべきです。

そのうえで、今回の法案のように「在留資格」のカードを増やすだけの
あまりに安易かつ目先の手法はやめて、

根本的に、多様な価値観を力にして経済や社会を発展させる
新たな共生社会をめざす受入れ基盤整備をしっかり行うことが大前提であると考えます。

財政、雇用、教育、社会保障、地域社会といった多角的に、
出入国管理から教育・生活までをフォローし得る、国と地方自治体とが連携した、
「多文化共生社会庁」なるものを構想する必要があると思います。

政府法案にある「出入国管理庁」では、法務省管轄で、
これまでのように入国後はほぼ自治体に丸投げ、という事態を繰り返すことになります。

また、技能実習制度は廃止をすべきです。
度々、米国国務省や国連やILOからその人権侵害を指摘された、
単純労働者ではないという建前と実態の歪みをきっちり正し、
国際的に信頼を回復しなければ、日本は「選ばれる国」から脱落していくでしょう。

一方、新たな在留資格とされる特定技能1号の5年上限は、
技術が上達した頃に企業は人材を手放し新た育成しなければならないとすると、
結局、コスト的にどう使い回すかという低賃金で劣悪な実態となりかねないと危惧
します。経済持続性を担保するためにも、2号の「熟練した技能」に明確な基準を
もうけて、労使ともに将来性を見通せるような制度にすべきと考えます。

なお、社会的に、最も大きな課題と感じるのは、
日本の産業基盤には不可欠となっている外国人労働者の存在と、
一方では「外国人といえば事件報道」であるかのような
一般に蔓延する風潮との間の、大きなギャップです。

政府は「移民政策」ではない、などと誤魔化すのはやめて、
正面から堂々と、議論してほしいと思います。

でなければ、日本社会に分断と排除が生まれ、
社会全体に混乱と不安が広がり、そのことの方がよほど危険ではないでしょうか。

今回法案をきっかけに、国会内外に、真摯な議論が生まれることを期待します。