【国会質問】原発運転「原則40年ルール」を変えるな

政府から原発運転期間「原則40年・1回のみ20年延長」という規制ルールを見直す案が出ている件について、予算委員会・第六分科会にて環境大臣と原子力規制委員会委員長に対して、国会質疑に立ちました。

今回の持ち時間は、30分です。

「3・11」を前に、このような機会を与えていただいたことは、私にとって大きな意味を感じます。

れいわ新選組のくしぶち万里です。

3.11の東日本大震災と福島第一原発事故から、まもなく12年が経ちます。
改めて、すべての犠牲者の方々のご冥福をお祈りするとともに、いまなお、健康や生業に大きな影響を受け、あるいは避難を強いられている皆様へ心からお見舞い申し上げます。

事故はまだ収束していません。原子力緊急事態宣言も発令中であり、
いまも7市町村は帰宅困難区域で立ち入れず、帰れない人が少なくとも3万人もいると言われています。

当時私は、政権与党の衆議院議員として、津波の被災地には一週間後、事故1ヶ月後に足を運び、これまでに見たこともない凄惨な光景に言葉を失ったのを、昨日のことのように覚えています。

原子力に対する安全神話を二度と繰り返してはならない。
そのために、国が原子力の推進と規制を分離し、安全規制行政を一元的に担う「独立した組織」として新たに発足させたのが原子力規制委員会であり規制庁であります。

しかし2月10日、岸田政権は、原発推進への大きく舵を切り、安全神話を復活させかねない内容を盛り込んだGX基本方針を閣議決定いたしました。

岸田政権は「原子力依存度はできるかぎり低減していく」という説明していますが、
言っていることと、やっていることが、180度違います。

GX基本方針の内容は、原子力について、
①原発再稼働の推進、②次世代革新炉の新増設、そして、③原発の運転期間延長、
原子力を長期に渡って活用することが明記されています。

とくに問題なのが、期間の延長です。

「原則40年、最長60年」という運転期間の上限を維持しているように見えながら、
審査で停止した期間を除けば、70年、80年も可能。60年を超える延命に道を開くことになります。

原子力規制委員会における議論は、その是非こそ、論点だったはずですが、
それより、先に、原子炉等規制法からこのルールを全削除される方針となってしまいました。

2月8日の原子力規制委員会で、4対1で唯一、反対した石渡委員からは
「科学的・技術的な知見」に基づいて「人と環境を守ることが原子力規制委員会の使命である」、
「運転期間を法律から落とすことは安全側への改変とは言えない」との発言がありました。

賛成した伴委員からも、2月13日、
「制度論が先行して、60年超えが後回しになり、ふわっとしたまま決めなければいけなくなった」、
杉山委員からは「外から定められた締め切りでせかされて議論してきた」
「我々は独立した機関であって、外のペースに巻き込まれずに議論すべきであった」
という、苦言が出されています。

なぜ、2月8日に規制委員会で反対意見が出されているのにその結論を待たず、
政府は翌々日の2月10日にGX基本方針を閣議決定したか、環境大臣に質しましたが理由が分かりません。

「独立性」を持って原子力の安全規制を審査する規制委員会の決定プロセスを、政府は尊重しなかったのは重大な問題です。

「独立性」というのは、政府とは違う、技術的・科学的な根拠に基づいて安全性を審査するということを旨としている組織のこと。だからこそ「国民からの信頼」が得られるわけで、そこに疑念が生まれれば、その時点で、運転ルールはもちろん再稼働や新増設という話にはならないと思います。

また、結果的に、2月13日の規制委員会・臨時会で、異例の多数決によって、新たな規制制度は決定されたわけですが、山中委員長は「法案のデッドライン(締め切り)があるので仕方がない」と釈明していますが、
なぜ、独立した組織の議論のペースが政府の法案によって急かされるのでしょうか?

その点、山中委員長に質しましたが、法案提出を気にしていた答弁がそのまま返ってきたので、私は、政府の都合は、独立した規制機関に関係ない、とはっきり申し上げました。

事実上、政府の都合を優先させたわけですが、独立した規制機関の存在意義を失いかねない行為であり、そのような姿勢が、原子力政策に対する国民の不安や不信を広げるものになっていることを深く自覚いただきたいと思います。

続けて、山中委員長にお聞きしました。

15日の予算委員会で、総理は「原発の運転期間」について「安全規制のためだった」と答弁されました。
実際に、「運転期間」については原子炉等規制法は第2節の第43条3の32に定められており、成立時は安全規制だったことは紛れもない事実であるということで、山中委員長も間違いありませんね?

よく分からないお答えでした。どっちに転んでもいいような。ご答弁でした。

しかし、その時の経緯をもう一度、私も調べましたが、大きなポイントはですね、冒頭で申し上げたように、3.11原発事故を受けて、原子力の規制行政の責任機関を規制委員会に一元化するのとセットで見直されたのが、新たな原子炉等規制法であるということです。

しかも当時、民主党だけでなく、自民党と公明党の3党で合意して決まった法律です。
超党派でつくった法律は国会において重いですよ。

その柱の一つが、運転期間の制限の規定の追加だったのですね。
つまり、規制委員会の発足と運転期間の上限ルールはセットであったということです。

ここで、運転期間ルールが「原子炉等規制法から全削除」されれば、規制委員会自体の存在意義にかかわるわけであり、規制委員会はこのルールの存在を守らなければならないのではありませんか。

運転期間ルールだけが、一人歩きしているのは大変不可解なんです。

続けて、山中委員長にお聞きします。今回、GX基本方針に従って原子炉等規制法から「運転期間の制限」の規定を全削除する改正案が提出されると聞いていますが、その立法事実はなんですか?

そもそも今回の運転期間ルール変更の議論は、どのような経緯だったのでしょうか。

総理がGX実行会議で原発運転期間延長を含めた検討の指示を出したのは、8月24日とされていますが、水面下では様々な動きがあったのでしょう。

私がみる限り、3つの段階があるように見えます。

このかん、委員長がよく引き合いに出される令和2年の「経年劣化との関係に関する見解」を細かく見ると、次のことがわかります。

2017年1月18日に開催された原子力規制委員会と電力事業者との意見交換会で、事業者側から「一定の期間を運転期間から除外してはどうか」と提案があった。ここに、端を発していることがまず明らかです。

次に、その後、2019年4月に出された経団連の提言を見ると、そこには「不稼働期間を運転年限から除外する」「運転期間を60年超に延長する」と書かれていて、2017年の意見交換会を裏付けているようにみえます。つまり、事業者側からの提案で始まっているのですね。

そしてその後、2021年4月14日、第23回原子力小委員会の議事録を見ると、電気事業連合会から「安全対策投資の回収見通しが厳しい。運転期間を見直してくれ」という要望が出ています。

要は、今回の運転期間のルール改正、つまり、原子炉等規制法を改正が必要とされている、その本質は「安全のための投資がかさむから、費用を回収するためには運転期間の延長が必要」という、電力会社からの要望、つまりはお金の話なのではないでしょうか? 違いますか、委員長?

要望があった、ということをお認めになりました。
そうすると、山中委員長がよく引き合いに出される、令和2年の見解で「規制委員会が運転期間のあり方について意見を述べる立場にない」というのは、「停止期間について延長してほしいという電力会社からの要望に対して『それはできません』と答えたものだったということでいいですね。分かりました。

ただ、政策に意見を言う立場になかったとしても、法律から条文を全削除する話ではない、のではありませんか?

環境大臣に、お聞きします。
環境省は、基本的に、国民の健康や命、生活を保護する「規制」側の省庁であると考えますが、原子炉等規制法から運転期間を全削除する法改正の理由はなんですか?

いや、答えになっていません。
なぜ炉規法から運転ルールを全削除するのですか?と聞いています。
原子炉等規制法の所管庁は環境省ですし、法改正の立法事実について、規制委員会とどのような協議があり、大臣は炉規法から条文削除をすることをお認めになったのですか?

どんな法案審査を通されたのか、明らかにしてください。
経産省との規制委員会との間で、大臣は、決して中立的な立場ではありません。

それだけではありません。
運転期間のルール変更を電気事業法に移管して、実質、原子力利用の推進と規制が一体化する改正法案を了承されているわけですね。内閣法制局と条文の審査は済んでいるはず。

今回、電力会社の経済性を最優先するルール変更を急ぎ、60年超えの老朽原発リスクに対する十分な議論もないまま、原子力利用政策に運転ルールを移管して推進と規制の一体化に逆戻りさせていいのですか?
それが、「束ね法案」の実態です。

環境大臣に、いま一度お聞きします。
福島原発事故の最大の教訓として、推進と規制を分離し、原子力規制委員会の発足とセットで「40年運転ルール」がつくられましたが、それがわずか11年で変更されることになります。

今回のルール変更について、「束ね法案には俺は署名しない」。そうご決断いただけませんか?いかがですか? 被災地出身で、県内には女川原発もある。そして、長らく、復興特別委員会の筆頭理事もお務めになっているわけですからお答えください。

先週末、大臣は総理から「国民の不安を払拭していくために説明ができる準備を進めた上で法律案の閣議決定を行うべき」との指示があったとされています。

今日の質疑で、まったく不安は払拭されていない、それどころか、誰のために40年運転ルールを変更するのか、電力会社のための理由しか出てきていません。それが今日の結論です。

ですから、法案の閣議決定はしない、ということを強く求めます。

次に、60年超えの原発の安全基準について、お聞きいたします。

まず、先日予算委員会で、西村経産大臣は「米国で80年延長の承認を受けたものが8基ある」と答弁されました。しかし、うち「6基は承認取下げ」になっていますので、政務官、訂正してください。

よく大臣は「米国では運転期間の延長回数に制限はないし、英国やフランスでも運転期間に制限は設けられていない」と答弁されていますが、これまた、全く条件が違うわけですね。

何が違うか。
いちばん大きな違いは、原発運転認可の延長審査に際して、地域の住民が、その安全評価や環境影響評価に参加して、懸念や反対を表明する機会が保証されていることです。

実際、アメリカのカリフォルニア州のディアブロキャニオン原発は、環境への影響が争点となって結局、延長運転を断念、閉鎖が決定されました。

フランスでも、10年ごとの延長の審査プロセスにおいて、住民参加の協議を行うことが法律で義務づけられているのです。

委員長にお聞きしますが、日本でも住民の参加や環境への影響を原発審査に取り入れるべきだと思いますが、いかがですか?

今回、60年超えの原発の安全基準についてその枠組み以外は決まっておらず、先に運転期間の全削除を決めてから、さあ老朽原発をどうしますかと、今週水曜日から中身の検討を始めるというのは、おかしいと思いますよ。あまりに雑過ぎます。

ルール変更するなら、住民参加の協議を審査プロセスに法的に義務づけるよう、ぜひ入れてください。

このパネルを見てください。
現行の、原則40年運転ルールを適用すれば、2049年には原発稼働ゼロが実現するんですね。

やはり原発は事故リスクがありますし、日本は地震大国です。南海トラフや首都直下型地震は30年以内に70%の確率で起こると言われています。そしてウクライナの戦争を受けて、原発攻撃リスクも高まっています。

ですから国民の多くは、程度の差はあれ、将来的に原発を減らして欲しいと考えてきました。
それが、3,11 事故後における国民の大きな期待であるわけです。

れいわ新選組は原発は即禁止し、積極財政で、国が原発を買い上げ「廃炉ニューディール」を進める立場ですが、現行ルールなら、遅くても2049年には原発は稼働しなくなる予定なのです。

しかし、今回の新しい規制制度に変更すれば、原発依存はずっと続く状況になります。

次世代革新炉とは名ばかりで実用性に欠け、コストは高くなる新しい原発を新設するということも明記された、間違ったGX基本方針のもとでは、持続可能な社会は実現できません。

国民そして将来の子供たちに、リスクの高い、どのような影響を及ぼしてしまうか、ということを真剣に考えるべきです。

れいわ新選組は、脱原発・脱炭素。
この2本を柱にして、真の持続可能な社会をつくるため、引き続き、力を尽くしていきます。