【国会質問】調布・道路陥没事故と外環道工事について


2月21日(火)、予算委員会・第八分科会にて、
調布の道路陥没事故と外環道工事について、国土交通大臣に質疑を行いました。

この問題は、かねてより、事故現場を訪ね、被害住民の皆さんの声を
お聞きしてきましたので、必ず、国会で取り上げたいと思ってきたテーマでした。

ようやく、国交大臣に直接、30分の時間枠を得て、この問題について質すことができました。
被害住民の皆さん数名も傍聴に来てくださり、ありがとうございました。

斎藤国土交通大臣が、現場へ調査に来るよう、強く要請し、
「しかるべき時に、現場を調べてみたい」という大臣の言質を得ることができました。

しかし、一貫して、国は責任を取らない姿勢が明らかであり、
事業者に押しつける答弁ばかりです。

国の公共事業として、国も事業者であるわけですから、そんな理屈は通りません。

引き続き、被害住民の皆さんの側に立って、問題追及してまいります。

◇◇◇

れいわ新選組のくしぶち万里です。

本日は、国交大臣へ、国の公共事業である「外環道」の問題について質問いたします。


ご存じのとおり、2020年10月、私の選挙区である東京都調布市たいへん閑静な住宅街の道路が住宅の敷地の一部も含めて、突然、大きく陥没し、その後、3つの空洞が発見されました。

その原因は、地下47mの深さで巨大シールドマシーンを動かすという外環道トンネル工事による地盤沈下でした。

その後、私も現場へ行き、被害住民の皆さんとお会いし、道路陥没前から、トンネル工事による振動や低周波音など健康被害に悩まされ、不眠や苦痛をはじめ地盤沈下による住宅のズレやひび割れなどの深刻な状況を、この目で見てまいりました。

大臣、想像できますか?

それから2年半近く、さらに、閑静な街は壊され、人が離れ、住民が要求する独立した「第三者委員会」の設立も、検証や賠償もなく、被害住民の皆さんは今も置き去りにされたままです。

大臣、国の公共事業が、住民の財産権のみならず、人権侵害を引き起こしている、そのような事態が続いています。

今日は傍聴席に、被害住民の皆さんも来ておりますので、ぜひ、斎藤大臣には誠意あるご答弁をお願いいたします。

【計画と事故処理をめぐって】

Q:(無駄な公共事業ではないか?・供用時期は?)

まず大臣、お聞きします。もともと外環道事業は、東京都心を何重にも取り巻く環状線計画から始まっていますが、計画から数十年経って、政府はいまも、本当に、この路線が必要と考えているのでしょうか?一体、いつごろ、供用できるとお考えですか?

(大臣)現在も、必要な事業である。調布の事故を受け地盤補修を行うなど対応が発生しているので工事再開が見通せない。いつ供用できるかは、お答えできない。

Q2:(費用対効果は?建設費用、収入見込みー車台数、資金回収の試算)

必要とおっしゃるなら、当然、「費用対効果」を考えているはずですが、①建設費用はいくらかかり、②収入見込みとして、車が何台くらい走っていくらになるか、資金回収の見込みはいつになるか、試算を教えてください。

(道路局長)供用される見込みが立っていないので試算は難しい。事業費は事故の再発防止対策などで増額されることになるが、いずれも、コスト縮減に努める。

(くしぶち万里)住民への賠償を入れれば当然コストは高くなる。その分を削減いただかないよう強く求める。

【外環道訴訟と仮処分裁判、その決定について】

Q3:(正当な補償とは?)

さて、東京外環道裁判では、憲法29条の「財産権不可侵」と、公共のための使用条件「正当な補償」が争われています。国は、これについて、どう考えているのか、お聞きします。

斎藤大臣は昨年、やはり予算委員会の分科会でこのように答弁されています。「通常使用されない空間である大深度地下に「使用権の設定」を認めるというものでございます。大深度地下における工事について、地上に影響を与えない、ということを前提としたものではございません」と。

そうであるとすると、

大臣、大深度において「使用権が設定されたケース」であっても、「地上に影響が出れば」補償が必要となる、という理解でよろしいですか?

(大臣)通常使用されない空間に使用権を設定しても、財産権の制約に伴う損失が発生しないものと考えられるので、補償を要しない。一方、調布の陥没事故については、工事施工に起因するので、その損害の賠償は事業者の責任と考える。

(くしぶち万里)国は責任を負わないということですか?「使用権の設定」の認可者は国ですので、事業者に責任を押し付けるのはおかしい。大深度法16条第4号にある「事業遂行の意思と能力」のある事業者を選ぶことを放棄していることになります。

Q4:(仮処分対応、今後の工事の見通し)

次に、東京地裁民事9部は、2月28日の「気泡シールドマシン掘削差止め命令」を求めた仮処分裁判で、東名立坑発進の2基のマシンの停止が命令されました。南行線は調布市東つつじヶ丘2丁目地内から、また北行線については調布市東つつじヶ丘3丁目地内から、三鷹市の井の頭通り付近までの間の掘削ができないままとなっています。

この停止部分は、本線部分の6割を占め、その決定は、事業全体について再検討を求めたものとみられます。

国は、これを受けて、今後の事業をどう進めるかという点が重要です大臣は、「今後、決定の内容をよく確認し、関係機関と調整の上、適切に対応していきたい」としてから、11ヶ月が経ちますが、どのような検討がなされ、調整が進んだのか?、お答えください。

(大臣)具体的な再発防止対策を取りまとめる必要がある。そのうえで、仮処分決定に対する異議申し立ても含めて関係機関と調整していく。

(くしぶち万里)完璧な安全対策なんてないですよ。それを証明したのが調布の道路陥没事故であった。工事中止しかないと考える。その検討をお願いしたい。

【地盤補修工事について】

Q5:(陥没対応、補修工事)

事業者は陥没周辺のトンネル直上の約30戸について、買い取りもしくは一時移転をもとめ、住宅の解体―更地化―地盤補修をすると勝手に決め、交渉に入るとともに、その地盤補修工事についての計画を発表、住民に押しつけていると言える状況です。

地盤補修工事については、もし実施するなら、被害が出ている全域(事業者が言っているだけで約1000戸)を対象にすべきなのに、トンネル直上に限っているのは、極めて不合理であり理解ができません。

例えば、ガレージ下が陥没した家の2軒隣のお宅で、隣のアパートまでが地盤補修範囲に入るのですが、トンネルの直上にはあたらないので、買取はできないと断られているケースがあります。

なぜ、トンネル直上の30戸は更地にして地盤改良をする必要があるのでしょうか?

なぜ、トンネル直上の約30戸以外は必要がないと考えたのか?、理由をお答えください。

(道路局長)現状においては、直上以外には、地盤の緩みは発生していない。隣接地で、地盤の緩みが確認されたら、適切に対応していく。

(くしぶち万里)適切に対応、というのは何でしょうか?

大臣、地盤補修工事の目的はなんですか?例えば、①住民が安全に住み続けるためなのか、あるいは、②すでに掘った南行きトンネルが浮いてくるなどの支障があるからなのか、または、③大深度地下法の定義に無理やりはめようとしていのか、それとも、④傍らを通る北行トンネルを掘るためなのか。その目的は、住民が安全に住み続けるということ以外にないはずだが、これは極めて理解できないのですよ。大臣に確認したいことは、その目的は何か、ということです。

(道路局長)シールド工事が原因で緩みが生じた地盤、これを元の地盤強度に戻すためのもの。
(くしぶち万里)それは分かっている。工事の狙いは何か、と聞いている。答えていただいていない。

範囲を限定している理由は、それ以外の地域にも広げてボーリング調査で緩みが分かると、大深度地下法の定義に影響してしまうからではないですか?

地盤の緩みや家屋の被害は地域全域に広がっているのですよ。にもかかわらず、一方的に地盤補修工事のあり方を決め、たった数センチ直上の「地盤補修範囲」から外れるとみなされると買取を含む「仮移転」の対象にはならない、また、たった数センチ「補償対象地域」から外れると説明会の案内さえ来ない。おかしいじゃありませんか? 大臣、現場に調査に来ていただけませんか?

(大臣)しかるべき時に、現場を調べてみたい。

Q6:(地盤補修工事・道路法第35条)

そもそも、地盤補修工事の責任主体は誰なのでしょうか?この準備工事は、道路法第35条が適用されるわけですが、例えば、補修完了後に、地盤の問題が起こった時には、永年、国が責任を負うということでよろしいでしょうか?

この、地盤補修工事と、準備工事は、それぞれ、どれくらいの規模なのか。「地盤補修工事」とは、普通の一戸建て住宅、30戸を壊して更地にする(220m×16m)。一方、「準備工事」というのは、近くに入間川という川幅8メートル程の都市河川があってその両岸にも住宅街が迫っていますけれども、300-400mのパイプラインを敷いて、近くの公園を「工事ヤード」にし、コンプレッサーなどを置く、というんですね。

これは大工事、大規模開発ですよ。

どういう法に基づいて、誰が責任者で行っているのでしょうか?

大深度法によるものですか?都市計画法によるものですか?

(大臣想定)道路法です。

(くしぶち万里)そこはわかっています。道路法の上位法について伺っています。国の公共事業ですよ。住民の新たな被害が出るかもしれないとき、誰が責任を負うのか、ということです。

Q7:(地盤補修工事・健康被害)

いま計画されている地盤補修工事は、先程、規模感も申し上げましたが、いまだ詳細は明らかにされていないんですね。私は専門的なことは分かりませんが、高圧噴射 撹拌(こうはん工法)で行う、そのための準備がすでに12月から始まっていて、セメント・サイロ等を甲州街道北側に置いて、そこから京王線をくぐり、入間川沿いに東つつじケ丘2丁目の陥没現場近くまでパイプラインで、セメント・スラリーを流す、また、逆方向には地盤から出た、排泥を流す、という工事とお聞きしています。

そこで質問ですが、これまで、このような工事を閑静な住宅街でしたことがあるのでしょうか?騒音、振動、低周波音の影響はどう抑えるのですか?

陥没事故だけでも甚大な被害なのにこのままだと、これまでの物理的被害だけでなく、精神的被害を含めた健康被害の二次被害、三次被害の影響も予想され、それを未然に防ぐ対策が必要と考えます。

民間では、市民基金による健康被害調査も行われています。住民のアンケート調査だけでも50軒を超えるお宅で低周波音の不快感を訴える回答が出ています。住民の健康問題は決して無視してしてはいけない被害です。

住民の人権や財産権を守るため、国は「住民被害調査対策室」つくる考えはありませんか?

(大臣)事業者であるNEXCO東日本が責任を持って実施していくもの。

(くしぶち万里)工事主体は事業者であるのは分かるが、被害の出ている住民への対応は国が責任を持つべき。国の公共事業である。


Q10:(被害者救済)

最も問題なのは、住民に何の手当もないということです。住宅街の環境を壊され、家や人生設計を壊され、健康被害が続いている人もおり、外環道工事の問題を根本から考え直さないといけないのに、被害住民はまったく放置されたままなのです。事業者や事故の原因者は、被害住民に対してきちんとお詫び、精神的損害も含め、誠実に損害賠償すべきではないでしょうか?

(道路局長)今回の補償の範囲については、トンネルの端からから約45mを基準にしている。範囲外でも、因果関係を確認の上、個別に対応する考え。

(くしぶち万里)どのように住民に向き合ってきているか、は大変重要なポイント。

Q11:(地盤補修工事・避難体制)

家屋を解体して、地盤補修工事が完了されるまでの間の「避難体制」について伺います。既に、陥没事故前の振動・低周波音などで、多くの住民に健康被害が出ていることから、今回の地盤補修工事の期間中も類似の被害が出ることが予想されるわけですから、

周辺の希望者には、国と事業者の責任で、買取・仮移転・一時避難の選択肢を与えるべきであると考えますが、いかがですか?

(大臣想定)健康被害について因果関係を調べる必要がある。

(くしぶち万里)トンネル直上の傍のある方にすでに深刻な健康被害があり、買取交渉をしているが、事業者からよい返事が得られないという具体的な事例が出ているんですよ。損害賠償と避難環境をつくるのは、当然の、国と事業者の責務であると考えます。買取・仮移転・一時避難の選択肢をつくることを検討する、と約束してください。


Q13:(住民との話し合い

最後に伺います。今回の陥没事故にあたって、国交省やNEXCOはどのように住民と向き合ってきたのでしょうか。昨年10月27日の参議院国土交通委員会では「住民に皆様には丁寧に対応するように私からも指示をしている」と大臣は答弁していますよね。

その後、何回くらい「住民説明会」を行いましたか?どのような「丁寧な対応」が行われたか、お答えください。

住民がオープンハウスではごまかされるので、説明会を積極的に開くように要求していますが、これも、大臣、あくまでも「第一歩」にしか過ぎません。形ばかりの、一方的な説明会を求めているのではなく、地域の住民は、しっかり国や事業者がこれまでの深刻な被害を受け止め、対等な関係で、じっくり話し合う民主的なプロセスを作ってほしいということを求めているわけですね。

この点、日本は本当に弱い。大切な公共事業ほど、先進国では丁寧に住民に向き合います。

そもそも、外環道事業は、大深度法によって、住民は交渉権を奪われていますから、他の公共事業と比べても、さらに丁寧な対応が必要であり、そこへ事故まで起こしているのですから、その必要性は、国交省としては最重要課題なのではありませんか?

大臣には「丁寧に対応」と言う、その中身をですね、ぜひ事の本質をご理解いただいて、住民が納得のいく「説明会」を第一歩、まずは開いていただくよう、強く求めます。

(大臣)広く住民の方々が参加できる意見交換の場やオープンハウスなどを通じて、丁寧に説明をしていく。

(くしぶち万里・まとめ)
大臣、今日はさまざまな質問をしましたが、これもほんの一部にしか過ぎません。外環道工事によって壊された町を歩き、被害住民の方とお話しして思うのは、なぜ皆さんが、このような目に遭わなければいけないのか、こんな理不尽な現実があるだろうか、ということです。

これは、国の公共事業なんですよ?それが、道路陥没や家屋損傷、一時避難だけでなく、低周波音や振動、騒音による健康被害など、まさに、人権侵害を引き起こしているわけです。

そのような深刻な被害を与えた事態の根本は、大深度地下法であります。契約交渉不要で、住民に説明しなくても良い、補償もいらない、環境アセスもずさんでいい。いったい、誰のため、なんのための法律なのでしょうか?

大深度地下法は憲法29条が保障する財産権を侵すだけでなく、住民の了解を不要とすることにより、生命、健康、暮らしなど、最悪の場合、命まで奪いかねない、いわば、人格権侵害を引き起こすものといえます。

大臣には、国の公共事業によって被害を受けた人びとが、財産権のみならず幸福追求権を取り戻すことができるよう救済と補償を行い、外環道工事は中止、大深度地下法は廃止そのことを一日も早く決断いただきますよう、強く求めて、私の質問を終わります。